2016.10.26

コムスに乗って、出かけよう 野草の魅力にふれる、摘み草ツアー

野草

8月中旬。青い稲のたなびく夏真っ盛りの上山では、観光事業開発の一歩としてテストツアー「VISIT UEYAMA コムスに乗って棚田をめぐる旅〜摘み草の旅」が行われた。これは観光を集落の一つの収益源にする試みで、小型のEV車コムスで集落を周遊しながら、薬草について学び、摘み草や野草料理を楽しもうというプログラム。
迎えたのは、多数の応募者の中から選ばれた9名のお客さんたち。そのほとんどが東京や大阪などの主に都心部から訪れた30〜40代の男女だ。初めて上山を訪れる人たちの目に、この場所はどう映るのだろう。スタッフも、いつもとは少し違った、期待と不安の入り交じるなかでのツアー開催となった。

モビリティ

集落の未来のために、生業をつくる

ここ数年、上山集楽には若い移住者が増えていて、お米や酒づくり、しいたけ栽培など
を収益の柱としている。だがこれから先、上山をますます面白くて住みやすい場所にするためには、地域内でお金を生み出すしくみが不可欠だ。
同時に上山では今「棚田」という大きな資源を中心に「新しい田舎」を目指して、さまざまな試みが進められている。過疎地での移動の問題を解決するためのモビリティの研究、地域での再生可能エネルギー、薬草を生かした地域医療の改善。そうした試みの一つに、観光が加わる。

「みんなのモビリティプロジェクト」の一環で提供された電気自動車コムスを活用した観光プログラムを担当する梅谷真滋さん。

「みんなのモビリティプロジェクト」の一環で提供された電気自動車コムスを活用した観光プログラムを担当する梅谷真滋さん。

観光事業担当の梅谷真滋さんは話す。
「上山にある魅力を生かして新しい仕事をつくれたらと、ずっと考えてきました。観光はその一つの方法。これまでにも田植えや稲刈り、夏祭りなどのイベントはありましたが、定常的に開催できる観光プログラムをつくりたい」。
いくつかあるツアーテーマ候補の中でも、今回は上山の自然と人材の両方を生かせる「摘み草」を選んだ。上山集楽の植物博士、松原テツロウ氏と奥さんの久美さんによる薬草摘みのワークショップを行う。

ツアーで提供される料理全般を担当する、料理教室『Yasu Kitchen Party』の安原昌友子さん(右)と、今回ワークショップを行う松原久美さん(左)。

ツアーで提供される料理全般を担当する、料理教室『Yasu Kitchen Party』の安原昌友子さん(右)と、今回ワークショップを行う松原久美さん(左)。

コムスに乗ってめぐる、夏の棚田

初日の8月20日。この日はまず座学で上山や薬草について学んだ後、コムスで棚田巡りを行う。お昼過ぎに到着した参加者たちと竹籠包みのお弁当をいただき場が和んだところで、梅谷さんの話が始まった。上山集落の成り立ちや棚田の再生活動の話に、みなで聞き入る。
今回参加者の中には園芸療法を仕事とする方や料理家、樹木医など食や植物に関わる仕事をしている人も多く、質問内容も多岐にわたる。「棚田でつくられたお米って普通の田んぼの米よりおいしいんですか?」「薬草の中でももっとも収益が得られそうなものは?」なんてリアルな質問も。

この日のお昼は野草のきんぴらや卵焼きに、おにぎりの入った竹籠包みのお弁当。

この日のお昼は野草のきんぴらや卵焼きに、おにぎりの入った竹籠包みのお弁当。

昼食

以前、自然環境調査員として働いていたテツロウさんは、日本中の山を歩き植物調査を行ってきた植物通。

以前、自然環境調査員として働いていたテツロウさんは、日本中の山を歩き植物調査を行ってきた植物通。

その後は松原さんによる薬草についての簡単な講義。彼の調査によれば上山には薬効のある植物が約150種あり、その多くは食べられる。野菜の栄養価がどんどん下がっている今、ミネラル豊富な野草がその分を補えるといった話も。翌日の摘み草への期待が高まる。
15時。さっそくコムスに乗って、上山集楽周遊へ。細くて起伏の多い集落の道も、コムスであれば楽に運転できる。まずは「大芦池」を経て大芦の展望台へ。鳥取の大山までもが見渡せる塔で、山風が心地よくここで一息。そして上山神社を経由して、いよいよ棚田を一望できる八伏地区へ。この季節、棚田の緑は夏の陽射しにきらきらと輝いてまぶしいほどだった。

コムスが10台連なって走る光景はなかなかの圧巻。

コムスが10台連なって走る光景はなかなかの圧巻。

大芦池は、集落の命綱ともいえる水源地。棚田へ水を送るためのしくみや、水門を開け閉めする水番の役割について聞く。

大芦池は、集落の命綱ともいえる水源地。棚田へ水を送るためのしくみや、水門を開け閉めする水番の役割について聞く。

棚田の美しい、上山集楽の八伏地区。

棚田の美しい、上山集楽の八伏地区。

薬草ざんまいの2日間

このツアーでのもう一つの楽しみは、料理家の安原昌友子さんや久美さん、集落の女性たちの手による野草をふんだんに使った贅沢なお料理。夜はなんとコース仕立ての創作料理で、(藍染に使う)アイの冷静ポタージュや、イノコヅチのしろあえなど、この季節に味わえる野草を使ったものばかり。岡山のワインや、上山の米でつくられた日本酒をいただいて、みな大満足の様子。

前菜は、左から野草(アイ)のズッキーニの緑のポタージュと、イノコヅチのしろあえ。ブルーチーズとイチジクのカナッペ。

前菜は、左から野草(アイ)のズッキーニの緑のポタージュと、イノコヅチのしろあえ。ブルーチーズとイチジクのカナッペ。

ノブドウ、クズに黒豆、大豆、小豆の入ったお豆のジュレ(左)。メインディッシュは、イノシシ肉のもち米シュウマイ、ラタトゥイユ、イノシシ肉のステーキ。

ノブドウ、クズに黒豆、大豆、小豆の入ったお豆のジュレ(左)。メインディッシュは、イノシシ肉のもち米シュウマイ、ラタトゥイユ、イノシシ肉のステーキ。

食事が済むと、残念ながら上山にはまだ宿泊施設がないため、津山のホテルへ移動してこの日は終了となった。
ツアー2日目。この日はさっそくフィールドへ出て摘み草を行う。テツロウさんのガイ
ドでまずは八伏地区付近へ。上山にはどこを見渡しても野草が豊富。ヨモギを手にテツロウさんが話す。
「ヨモギは夏になると苦くなるんです。虫に食べられないための防御反応。でも芽の部分はあまり苦くなくて今の時期でも食べられます」。次いで久美さんいわく「芽には成長を促す成分がいっぱい入っていて、カルシウムやミネラルも豊富です」。この後、アロマウォーターにするためのカキドオシを摘むことに。みなでわいわいと草を摘んだり、写真を撮ったり。

野草のほかに、松原夫妻が育てるアイやクワなどの畑もある。テツロウさんが手にしているのがアイ。

野草のほかに、松原夫妻が育てるアイやクワなどの畑もある。テツロウさんが手にしているのがアイ。

ハーブの香りのするカキドオシ。垣根を貫くほどツルがのびるためこの名がついた。

ハーブの香りのするカキドオシ。垣根を貫くほどツルがのびるためこの名がついた。

場所を変えて今度は樹木を見学に。「さて、クロモジの樹はどれでしょう?」というテツロウさんの問いに梅谷さんが答えてしまうというハプニングもありながら、ツアーは無事に進んだ。
オフィスに戻ってからは、カキドオシとクロモジの葉を使ったアロマウォーターづくりに挑戦。ハーブのような香りのカキドオシやクロモジは、ルームスプレイや防腐剤、虫除けなどに使用できることを久美さんが教えてくれた。

葉っぱをお湯に浸し沸騰させて、その蒸留水を冷やして液状にしたものがアロマウォーターになる。

葉っぱをお湯に浸し沸騰させて、その蒸留水を冷やして液状にしたものがアロマウォーターになる。

お洒落なものを求めているわけではない

お昼にはイノシシ肉と野草をたっぷり煮込んだキーマカレーをいただき、お腹いっぱいになったところで、みんなでこのツアーを振り返っての意見交換が行われた。
上山のスタッフが参加者に投げかけた質問は、上山を訪れて印象に残ったシーン、豊かだと思ったこと、そして残念に思ったことの三つ。
参加者の一人、Aさんはこう話した。「棚田の風景はやっぱり見事でした。観光地化されていない里山の風景や、野草に触ったり匂いを嗅ぐなど五感でふれられたのが良かった」。Bさんは「コムスに乗れたことは貴重な体験。風が気持よかった」。概ねみな豊かだと感じたのは、緑、空気、時間の流れ、水、ここに暮らす人たちの人間関係などなど。

最後のツアーのふりかえりでは、参加者からさまざまな意見が出た。

最後のツアーのふりかえりでは、参加者からさまざまな意見が出た。

課題についても多くが挙げられた。何より宿泊施設がなく、ホテルまで移動したことにはほぼ全員ががっかりしたことを打ち明けた。「夜の星空や早朝の散歩を楽しみに来る人も多いと思う」。「快適さやお洒落なものを求めているわけじゃない。多少不便で雑魚寝になったとしても、この集落に泊まりたかった」。
他にも、施設の人工的な看板が多くて目立つといった声や、自由にコムスに乗れる時間、地元の人たちとの交流や、薬草茶をつくる体験を求める声も。
全体的にはとても楽しかったという声を聞くことができて、ほっとした様子の上山メンバー。参加者の感想を糧にさらなるブラッシュアップをはかる予定。摘み草以外にも、ジビエや稲刈り、ナイトサファリなど、上山ならではのツアーテーマは豊富にある。今後に乞うご期待!です。

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上山集楽

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