福尾 吉剛さん

暮らしと仕事の境界線のない、働き方を求めて

冬のある日「いちょう庵」を訪ねると、福尾吉剛さんは薪割りの真っ最中だった。「みんなが自由に使っていい共有の薪を、いちょう庵の前にストックしておこうかと思っているんです」。
2016年10月からまた一人、上山の住人が増えた。みんなから「福ちゃん」の愛称で親しまれる福尾吉剛さん、平成4年生まれの25歳。その名前だからではないが、七福神の福の神様を思わせるような、相手をほっとさせる笑顔の持ち主でもある。今は、ここしばらく閉鎖中だった古民家カフェ「いちょう庵」に寝泊まりしていて、2017年春にはこの店を再開しようと準備を進めている。

いちょう庵の前にて。数年前に棚田団のメンバーが古民家を改修して始めた週末カフェ。

いちょう庵の前にて。数年前に棚田団のメンバーが古民家を改修して始めた週末カフェ。

いちょう庵の内装。この奥に福尾さんは寝泊まりしている。

いちょう庵の内装。この奥に福尾さんは寝泊まりしている。

上山へ来るまでは、社会福祉協議会(以下、社協)で、知的障害者や高齢者等の金銭の管理をサポートする「日常生活自立支援事業」を担当していた。
「前の職場は、ここまでが仕事でここから先がプライベートという境界線がはっきりしていて、そういう働き方に違和感を感じていました」
例えば上山では困っているお年寄りがいれば、公私ともに付き合いのある周りのみんなが相談して解決しようとする。それが以前の仕事では、各領域の担当者がいて役割があり、一人が手を出せる範囲が決まっている。

「僕の仕事は利用者のお金に絡む生活のコアな部分にふれることなので、福尾くんに全部任せるよって言ってくれる人もいました。でも実際に何かあった時、ここまでしか手を出せないとラインを突きつけられることがあって、ずいぶん歯がゆい思いをしました」

例えば利用者が入院した時なども、家族の同意を得るまでは何もできない。個人的な信頼関係があっても「責任が取れないから」の一点で思うような支援ができなかった。

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そんな時に思い出したのが上山で暮らす人たちのこと。学生時代から今もなお「チャリティーサンタ」というNPOの活動を熱心に行っている福尾さんは、福島の子どもたちを連れて上山を訪れたことがあった。夏祭りの運営を手伝ったり、自然体験のプログラムを通して、ここで暮らす先輩たちの暮らしぶりが目に焼き付いていた。
「ここでは、暮らしも仕事も隣り合わせ。高齢者を支援する活動もちょっとした生業として行われていたり。今この集落で進めていることの意義を話す皆さんはすごくかっこよくて。それに憧れたのが大きいです。自分はまだまだこれからですが、自分でもそんな風に仕事を生み出せる人間になりたい」

新人移住者の早崎さんとともに薪割り。標高の高い上山では、ストーブに使う薪が欠かせない。

新人移住者の早崎さんとともに薪割り。標高の高い上山では、ストーブに使う薪が欠かせない。

地域おこし協力隊の制度を利用して、2016年9月より上山に暮らし始めた。
今は田んぼの仕事、カフェの準備、みんなとの共同作業、地域の行事…と多忙な日々をおくる。4月からはパートナーの咲紀さんも上山で暮らし、一緒にいちょう庵を切り盛りする予定。まずは週に一度、土曜日の午後のみのスタートになるが、以前のように地元の人たちがふらりと訪れることのできる憩いの場にしたい。パンを焼いたり、子ども向けの自然体験教室を事業化することも考えている。

「いちょう庵は、外から上山に来てくれる人の入り口であり、地元の人たちも遊びに来られるハブのような場所なんです。今までは前の管理者である大地さんにみんな会いに来てくれていたと思いますが、今度は福ちゃんに会いに来たよって言ってもらえるような存在になれたらいいなと思っています」

いちょう庵のカウンターにて。店のマスターとしてここに毎週立つ日も近い。

いちょう庵のカウンターにて。店のマスターとしてここに毎週立つ日も近い。

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