夏祭り

古くて新しく、そして温かい、
上山の夏祭り。

上山神社の境内には、江戸時代末期に建てられたという立派な演芸場がある。いくぶん色褪せてはいるものの、棚田最盛期の賑わいを想像するには充分の大きさだ。かつて収穫を祝う秋祭りのときには、ここで歌舞伎が演じられていたという。役者はプロの劇団ではなくて上山の住民たち。台本も住民が書いたらしい。かつての役者さんの中には今でも元気に暮らしている人がいて、一度その頃の話が始まると止まらなくなってしまう。

夏祭り
近隣の地域にもない大きさの演芸場。ここで歌舞伎が復活する日も来るのだろうか?

近隣の地域にもない大きさの演芸場。ここで歌舞伎が復活する日も来るのだろうか?

日本中の集落がそうであるように、ここ上山でも上山神社は集落のコミュニティを守る大切な場所。常駐の神官こそいないものの、各地区の代表が宮総代となって、地区の住民と共に社殿の補修や清掃にあたっており、境内は神聖な環境が保たれている。

棚田と共に、集落の伝統も再生させたい。

住民総出のお祭りは、夏祭りと秋の収穫祭。しかし棚田が耕作放棄され、高齢化が進んだ2004年を最後に、いずれも行われなくなっていた。
最後の頃は、盆踊りのやぐらの周りを円く囲めないほど人数が集まらなかったとのこと。ところがどうだろう、この写真の賑わいは。これはこの夏2016年8月11日に行われた夏祭りのようす。棚田が再生されるとともに、かつての賑わいを取り戻したのだろうか?

普段はめったに人の姿を見ない上山神社の境内が、狭く見えるほど賑わっている。ただし、「無闇に規模を大きくせずに、いかに昔の姿を守り続けるのかが大切なんです」と水柿大地さん。

普段はめったに人の姿を見ない上山神社の境内が、狭く見えるほど賑わっている。ただし、「無闇に規模を大きくせずに、いかに昔の姿を守り続けるのかが大切なんです」と水柿大地さん。

田んぼだけではない。田んぼや水路を中心にしたコミュニティや、地域の伝統まで復活させないことには棚田の再生とは言えない。
そう考えた棚田団は、2011年に盆踊りを復活させた。
「まず、昔の雰囲気を守りながら復活させなくてはいけないと思いました」
と、棚田団の水柿さん。彼は東京都出身。『地域おこし協力隊』の隊員として棚田団と協働し、3年間の任期の後は上山に移住したひとりだ。

こうして復活した、“手作り感”溢れる夏祭り。

「かつて盆踊りを運営していた方々のお宅を回ってお話を伺いました。当時の会計簿を見せてもらいながら、どのような準備が必要なのか調べたり、倉庫から古い提灯を引っ張り出してきたり」

四つ拍子の太鼓を叩く水柿さん。若くして薬師堂地区の宮総代も務める。このときは音頭に合わせて太鼓を叩くのに必死。

四つ拍子の太鼓を叩く水柿さん。若くして薬師堂地区の宮総代も務める。このときは音頭に合わせて太鼓を叩くのに必死。

踊りは“四つ拍子”と呼ばれる音頭に合わせて踊る。これは備前地方で広く歌われているもので、伴奏は太鼓だけ。この軽快な太鼓を叩ける人は上山にも数名いるけれど、歌える人がいない。だから今のところは録音された歌に合わせて太鼓を叩く。水柿さんも必死でついて行く。いずれ、歌も歌うことになる……のかもしれない。

夏祭り
出店は棚田団をサポートしている企業の方々や棚田団、そして岡山市内のカレー屋さんも現れた。この“手作り感”がまた、上山ならでは。

出店は棚田団をサポートしている企業の方々や棚田団、そして岡山市内のカレー屋さんも現れた。この“手作り感”がまた、上山ならでは。

「昔の雰囲気の盆踊りを復活させるとともに、何か新しいことも始めて、もっと多くの人に上山まで足を運んでもらおうと思っていました」
と水柿さん。それが今や上山の名物となりつつあるスカイランタンだ。今でこそ流行の兆しが現れたスカイランタンではあるけれど、上山では今年ですでに5年め。お盆で帰省している地元の人たちはもちろん、岡山市内からやって来る人も増え、今年は300名ほどの参加者が上山の夜空にランタンを浮かべた。

夏祭り
意外に点火が難しいスカイランタン。しかし、夜空にふんわりと浮かび始めると、暗闇の中から歓声が上がる。民家の集中する都会では絶対にできないイベントだ。ただし、翌日のランタンの回収が大変らしいけれど。

意外に点火が難しいスカイランタン。しかし、夜空にふんわりと浮かび始めると、暗闇の中から歓声が上がる。民家の集中する都会では絶対にできないイベントだ。ただし、翌日のランタンの回収が大変らしいけれど。

「街中ではなかなかできない、里山だからこそできることで里山に賑わいをもたらす。その象徴としてスカイランタンをあげています」
スカイランタンの神秘的な光を見送った後は、夏祭りのフィナーレを飾る花火。三陸海岸を中心に、全国で一斉に花火を上げるプロジェクト、『LIGHTUP NIPPON』に上山も参加して、東日本大震災と熊本地震の被災地復興を願って打ち上げられた。

夏祭り

ショーアップされた派手な花火大会ではないけれど、だからこそ上山らしくもある。観客から見える場所に打ち上げの装置が置かれ、観客の真上で開く花火。これもまた、棚田の集落ならではの、小さな贅沢なのだ。
夏祭りが終わると再び草刈りに追われる毎日が始まる。おっと、その前に翌日は祭りの後片付けを行わなくてはならない。しかし、そのことは誰も口に出さず、しばらくの間は花火の余韻に浸っているのだった。

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