田植え

田植え。
棚田の夏の始まり。

田植え

毎年5月6月は、稲作にとって多忙を極める時期でもある。週末も平日も無く、のどかな田舎暮らしのイメージとはほど遠い、カラダを張った農作業の毎日。言うまでもなく田植えがあるからで、その日に備えての準備が、これまた寝る時間もないほどなのだ。
田植えの時期は、地域、気候、稲の品種などによって違い、ここ上山では6月の上旬から中旬。その日に備えた準備は4月から始まっている。

4月から5月の間に行われる水路掃除。冬の間に積もった落ち葉や泥の掃除から、田植えの準備が始まる。

4月から5月の間に行われる水路掃除。冬の間に積もった落ち葉や泥の掃除から、田植えの準備が始まる。

まずは、このウェブサイトにも繰り返し登場している水路掃除。大芦池に雨水を引き込むための「掛け井出掃除」と、すべての棚田に水を引き込むための「水路掃除」がある。
一方で、いよいよ田んぼに水が引かれる前に済ませておかなくてはならない仕事が「畦塗り」。これは冬の間に乾いて、崩れやすくなっている田んぼの畦を塗り固めて修復する作業のことだ。

6月の田植えのために、4月から始まる水路と水田の準備。

想像すればわかる。棚田一枚一枚の堤防である畦が崩れたらどうなるか。せっかく溜めた水は流れ出し、田んぼの水が涸れてしまうだけではなく、下の田んぼは水浸し。田んぼの水は、少なくてはもちろんダメ。しかし、多過ぎても苗が水没してしまうのでダメなのだ。

これが畦塗りという作業。これを見ると、畦の上は用心深く歩かなくてはいけない、と思うようになるはず。

これが畦塗りという作業。これを見ると、畦の上は用心深く歩かなくてはいけない、と思うようになるはず。

畦を踏まないように慎重にトラクターを操りながら、水と土とを混ぜ合わせる代掻き(しろかき)。右に見える畦に亀裂や穴があけば、そこから水が漏れてしまう。

畦を踏まないように慎重にトラクターを操りながら、水と土とを混ぜ合わせる代掻き(しろかき)。右に見える畦に亀裂や穴があけば、そこから水が漏れてしまう。

田んぼの畦は丈夫にできているように見えるけれど、ミミズ一匹が空けた穴から決壊することもあるという。モグラによる被害も日常茶飯事。しかも、水が張られた後に気づいたのでは手遅れ。だからこそ、この畦塗りは慎重に行わなくてはならない。水が張られた後も、田んぼの周りを歩くときには、畦に異常がないかどうか、慎重に見て回る癖をつけなくてはいけない。
そして、田植えの前には苗作りも済ませなくてはならない。発芽した稲が、田植えに適した大きさに成長するまで約3週間。だからこそ、畦塗りと苗作りの時期が重なるともう大変。このあたりの段取りをいかにうまく行うかが腕の見せどころなのだ。しかも、気まぐれな春の天気と相談しながら。

代掻きによって土と水が混ざり合うと、見慣れた田んぼのようすになってくる。

代掻きによって土と水が混ざり合うと、見慣れた田んぼのようすになってくる。

そして6月、水路を伝わって田んぼに水が張られると、棚田の景色は一変する。水面に青い空を映す棚田、これはこの時期にしか見ることのできない美しい眺めではあるけれど、そんな風景に見とれる暇も無く、田植えの前に「代掻き(しろかき)」という作業に追われることになる。

複雑な地形の中にある棚田では、機械化もなかなか進まない。

代掻きとは水と土を混ぜ合わせる作業。田んぼを沼地のような状態にして、苗の生育を助けるために行う。作業は小型のトラクターで行うけれど、坂の多い、狭く湾曲した棚田では機械化が遅れ、近年までは農耕牛による作業が行われていたとのこと。今でこそ邪魔者の雑草でも、草は牛にとって大切な飼料となるので、かつては雑草の奪い合いもあったとのこと。一見、能率の悪そうな農耕牛とは言え、棚田にとっては理にかなった農法だったと言えそうだ。

田植え
棚田団をサポートする企業の皆さまが、家族ぐるみで田植えもサポートしてくれた。その人数は総勢70名ほど。「苗を3〜4本、鉛筆を握るように持って、そのまま土の中に差し込みます」、と『上山集楽』の水柿大地さん。子どもたちもすぐに覚えてしまう。

棚田団をサポートする企業の皆さまが、家族ぐるみで田植えもサポートしてくれた。その人数は総勢70名ほど。「苗を3〜4本、鉛筆を握るように持って、そのまま土の中に差し込みます」、と『上山集楽』の水柿大地さん。子どもたちもすぐに覚えてしまう。

代掻きが終われば、いよいよ田植えの本番を迎える。上山集楽や棚田団の各メンバーが受け持つ田んぼを他のメンバーが手伝いながら、再生され、作付けの行われている80枚ほどの田んぼを回る毎日。そして週末には、棚田団をサポートする企業の方々や家族が集まっての田植えイベント。さらには一般からも募集された希望者向けの田植え体験イベントなども行われる。

近県の学生たちにも人気となってきた、上山集楽の田植えイベント。

田植えの合間、メンバーはイベントの準備にも追われることになるけれど、どちらのイベントも大盛況。一般参加の人たちの中には関西方面からの大学生が多く、彼らは皆、このイベントを楽しみにしているとのこと。このような若い人による応援は、年々増え続けているという。

手押し式の田植え機。棚田の風景に、すっかり溶け込んでいる。

手押し式の田植え機。棚田の風景に、すっかり溶け込んでいる。

今年から導入された着座式の田植え機。それでも水が多くて、ところどころ苗が水没していたとのこと。田植えって難しい。

今年から導入された着座式の田植え機。それでも水が多くて、ところどころ苗が水没していたとのこと。田植えって難しい。

手植えでは間に合わないような大きな田んぼには、田植え機が登場。これには手押しと乗用の二通りあり、乗用式が導入されたのは今年から。だいぶラクになった。とは言え狭い棚田で使われる田植え機は、苗を4列だけ植える四条植えまでしか使えない。やはり、棚田の作業には手間がかかる。

田植えが終わっても、決して息が抜けない棚田の夏。

こうして、上山の田植えが一通り終わるのは6月20日頃。しかし、苗を食べに来る鹿などの動物への対策も行わなくてはならない。田植えが終われば大急ぎで獣除けの電柵を設置し、それが終われば雑草との戦いが待っている。田植えが終わったからと言って、決して息を抜くことのできない棚田の夏は、こうして幕を開けるのだ。

イベント終了後。八伏地区の田植えは、日が暮れるまで続くのだった。

イベント終了後。八伏地区の田植えは、日が暮れるまで続くのだった。

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