古老の知恵

教えて欲しい、むかしの暮らし

子どもの頃ひもじい思いはしたことがない。お母さんらが工夫しとったんやろなぁ。 高原めぐみさん

photo_%e5%8f%a4%e8%80%81%e3%81%ae%e7%9f%a5%e6%81%b5_01田畑で育つ作物に、山で採れるキノコや山菜。身近にある食材を、長くおいしく食べられるように工夫を施すのが、昔の女性の大切な仕事だった。昭和11年生まれの高原めぐみさんも当時の食文化をよく知る一人。 そんなめぐみさんのお宅へ、上山に伝わる郷土食を教わりたいと梅谷奈々さんが伺った。
もうじきお母さんになる奈々さんは(2017年4月現在)、自分でも保存食や素朴なおやつをつくれるようになりたいと興味津々。訪れた日、めぐみさんは「凍りもち」づくりの真っ最中。 そこから話は始まった。

高原めぐみさん。小柄でご主人思いの料理上手。

高原めぐみさん。小柄でご主人思いの料理上手。

乾燥するために広げられた凍り餅。緑は海苔、黄色は網エビ、プレーンと豆の4種類。

乾燥するために広げられた凍り餅。緑は海苔、黄色は網エビ、プレーンと豆の4種類。

 

■ 子どものおやつにぴったりの「凍りもち」

—— わあ、きれいやねぇ!凍りもちですか?
「そうそう。昔はようおばあちゃんが一番寒い時期につくりよったんよ。ぺったんぺったんお餅をついて、棚をこさえてな。乾燥させるのに一枚一枚並べて。今はお餅つくのは機械になったけどな」

—— 色が付いてるのは何が入ってるの?
「緑は海苔で、オレンジのは網エビ。卵も入れてお塩や砂糖で味付けして。昔は餅米だけのと豆くらいしかなかったけどねぇ、最近はこうして色々つくるんよ。一つの種類で2升ずつ」

—— 全部で8升!毎年つくるん?
「必ずつくるな。大抵つくっておくと、子どもらが遊びに来たときに、焼いて食べてってぱっと渡せるでしょう。余計なもんが何も入ってないからね、いいおやつになるよ」

—— 揚げるんじゃなしに焼くんやね。
「揚げてもおいしいんやろけどな。うちは焼くな。ぷーっとふくれてな、あられみたいな感じ。あられもちとも言うんかな」

「もう食べられるよ」と、数枚ストーブに乗せてくれた。

「もう食べられるよ」と、数枚ストーブに乗せてくれた。

頻繁に裏返すうちに香ばしい匂いがしてきた。かじるとほんのり甘くて素朴な味。

頻繁に裏返すうちに香ばしい匂いがしてきた。かじるとほんのり甘くて素朴な味。

「昔はもちを返す役は貧乏人にさせろって言ったもんだよ。まだかなぁまだかなぁってしょっちゅうひっくり返すから」(めぐみさん)「なるほど〜〜!」(奈々)

「昔はもちを返す役は貧乏人にさせろって言ったもんだよ。まだかなぁまだかなぁってしょっちゅうひっくり返すから」(めぐみさん)「なるほど〜〜!」(奈々)

 

■ 手づくりゆえの工夫と楽しみ

—— めぐさんは、いつ頃高原の家に嫁いできたの?
「22歳の時やね。実家も上山で、すぐ近くで豆腐屋しとったんよ。子どもの頃からよう手伝わされてなぁ。臼で大豆ひいたり、水汲みしてな」

—— じゃあお豆腐もつくれるんじゃね
「昔はなんでも家でつくったからな。“みそ部屋”いう貯蔵の部屋があって、大きな木の樽に醤油や味噌やたくさんして。嫁いでからおばあちゃんに教わって麹も自分とこでつくったし、醤味噌(ひしおみそ)もつくってた」

—— 大豆も自分とこで育てた豆じゃろ。それで味噌つくって、麹も自分とこの米でつくって。
「そうそう。手づくりするといろいろ楽しみもあってな。今日は味噌つくるって言うたら、そんなら味噌もちが食べれるなぁって。味噌もちってのは、一度大豆を入れた後の塩気が残っている臼(うす)に、また茹でた大豆を入れて潰してそのまま食べるんじゃ。これが美味しいんよ」

—— おいしそうやねぇ。ほかにも何か子どもの頃食べていたおやつがある?
「流し焼きっていう、小麦粉に砂糖と塩を入れて焼くだけっておやつはよう食べてたよ。くりまんじゅうの型やらに流し入れて焼くんよ」

—— 流し焼き!どんな味がするんだろう。
「ホットケーキの卵が入っていないみたいな感じやね。卵なんて病気の時しか食べられない高価なものやったからな。今みたいに膨らし粉入れるわけじゃないし堅いんやけど」

—— やっぱり食べるものが厳しい時代やった?
「9歳んときに終戦でな。供出供出で、米は取られよった。でも上山は町の方と違ってそれほどひもじい思いをした覚えはないなぁ。お母さんらがいろいろ工夫してたんやろな。柿のづくし(熟した部分)をお砂糖代わりにしたり」

—— 柿をお砂糖代わりに!それはすごい。
「煮詰めてな、ジャムみたいにしてたんやろな」

07

 

ほとんどが保存食。娘に伝えるために

—— 今はスーパーへ行けば何でも手に入るけど、昔は冷蔵庫もないしな。どんな保存食があったの?
「大根のねじ干しいうのはようしたな。大根を縦に4つくらいに切って、日に干してしんなりしたらぎゅっとねじってな、水分をとばして保存しとくんよ。食べる前に水に浸けて戻して、酢漬けにしたり煮たりしてな」

—— やっぱり収穫した時期にまとめて干すんですね。
「そうやね、ナスも大根も日に干しておけば日持ちするからな。大根はそのまま土の中に入れといたり。あとはズイキって里芋の茎やら。つみくさも好きやから、セリとか三つ葉、ヨモギも摘みに行ってな。セリを干した大根と酢漬けにしたり。お父さんが食べたい言うて最近もつくったよ」

大根を入れた福神漬けと梅干し。もちろんめぐみさんのお手製。

大根を入れた福神漬けと梅干し。もちろんめぐみさんのお手製。

らっきょもたくさん漬ける。

らっきょもたくさん漬ける。

 

—— めぐさんは、ほんとに旦那さんと仲がいいですよね。いつも一緒にいて。
「優しい人やからなぁ。大きな声出したこともないしゆったりした人やから。最近はお母さんがつくった昔の味が食べたくなるみたいでな。手づくりのこんにゃくやら。最近はお寿司もつくったよ。ここらではサバ寿司いうてね、具の入ったご飯にサバを薄く切って酢に浸けたものと錦糸卵やら生姜やらを上に乗っけてな」

—— 食べたことはあるけど(笑)、つくれるようになりたいな。
「つくってみたらええよ。うちでする時はいっぱいつくるの。里に持っていったり親戚に持っていってな。つくったものを美味しい美味しいって食べてもらえるんが、私は一番嬉しいんよ」

—— 素敵やねぇ。私らは保存食のこととか、何を知らんのかもわからんくらいイメージがわかないけど、これから知りたいなと思ってるんです。このお腹の子にも伝えていきたいし。
「今な、娘に伝えようと思って帳面に付けてるよ。サバ寿司の作り方やなんか。奈々ちゃんは家も近いんやし、いくらでも教えるよ。またいつでもおいで」

らっきょのお裾分けをしてくれるめぐみさん。

らっきょのお裾分けをしてくれるめぐみさん。

ご主人の弘さんと。

ご主人の弘さんと。

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