狩猟・ジビエ

命を感謝して使いきる、
猟師という生き方

狩猟

上山には今も3人の猟師がいる。正確に言えば、狩猟免許をもつ人が3人。この免許で罠猟はできるが、銃を使うには銃砲所得許可がまた別に必要になる。30年ほど前までは銃をかついで山に入り、キジやウサギを追う鉄砲猟師も多くいたが、今ではやめてしまった人が多い。

カズヒサさんも鉄砲猟をやめた一人。「法律が変わって鉄砲扱うのが難しゅうなったからな。昔はま〜キジもウサギもたくさんおったわな。焼いて食べるとそらおいしいわな。自然に暮らしとるやつだから、癖がなくて香ばしゅうてな」

カズヒサさんも鉄砲猟をやめた一人。「昔はま〜キジもウサギもたくさんおったわな。焼いて食べるとそらおいしいわな。自然に暮らしとるやつだから、癖がなくて香ばしゅうてな」

ただ、今も昔も猟を「本業」としていた人はおらず、趣味の延長で猟を楽しみ、捕らえた獲物は自分たちで食べていた。農業中心の生活でも「集落のごちそう担当」として、鳥やウサギ、シカなどを捕っていたのだ。
それが今、猟は個人の楽しみや食糧の確保よりも、シカやイノシシなど獣害対策の意味合いを強くもつようになった。

猟師一人当たりの捕獲数は激増

シカ、イノシシが人里にも出没するようになり、農作物に及ぼす総被害額は全国で年200億円とも、実際にはその倍とも言われる。
国や自治体は有害鳥獣駆除に膨大な金額を費やし、一頭あたりの支給額も1〜3万円(自治体によって異なる)。捕ればお金になるというので、猟師たちはイノシシやシカを集中的に狙い、2013年度全国での捕獲頭数はシカが51万頭、イノシシが45万頭。猟師一人当たりの捕獲数は2007年度以降、急激に増えているのだ。(2013年度、環境省調べ)

シカやイノシシの数が増えた理由には、広葉樹が減り、山の中に食べものが少なくなったことや、猟師の減少が挙げられるが、データによれば猟師一人あたりの捕獲数は激的に増えている。

シカやイノシシの数が増えた理由には、広葉樹が減り、山の中に食べものが少なくなったことや、猟師の減少が挙げられるが、データによれば猟師一人あたりの捕獲数は激的に増えている。

くくり罠でシカを狙う

上山でも、時おり田んぼの隅でごそごそと罠を仕掛けている人を見かける。猟師歴の長い永井キヨシさんに、くくり罠の仕掛け方を見せてもらった。

本来なら猟師同士でも、各自の知恵や工夫で勝負するため罠を仕掛けている最中に声をかけるのはルール違反。だが今回は特別に見せていただくことに…(!)

本来なら猟師同士でも、各自の知恵や工夫で勝負するため罠を仕掛けている最中に声をかけるものではないが今回は特別に見せていただくことに…(!)

くくり罠は獣道に仕掛けて、獲物を待ち伏せするタイプの罠。塩化ビニール製の輪っかに獲物が足を踏み入れるとトリガー(引き金)が作動してバネが跳ね上がり、ワイヤーで足が締められる。

くくり罠は獣道に仕掛けて、獲物を待ち伏せするタイプの罠。塩化ビニール製の輪っかに獲物が足を踏み入れるとトリガー(引き金)が作動してバネが跳ね上がり、ワイヤーで足が締められる。

仕掛けた罠を見えないように葉でカモフラージュ。「まぁしかしそううまくはいかんのじゃ。(まだ新しい獣の足跡を指して)最近まで通っとるじゃろ。それがこの罠しかけてみい、ぴたっと来んようになるけぇ」とキヨシさん。

「それよかタバコよ。タバコ吸うちゃいけんのでぇ、猟師は」と笑うキヨシさん本人は、まさかのタバコ好き。昔は猟で山に入るときは、1週間前からタバコをやめたものだという。

「それよかタバコよ。タバコ吸うちゃいけんのでぇ、猟師は」と笑うキヨシさん本人は、まさかのタバコ好き。昔は猟で山に入るときは、1週間前からタバコをやめたものだという。

捕ったシカやイノシシは、自分で食べるのとお金に換えるので半々といったところ。小さければ自分でさばいて食べる。大きい獲物が捕れれば、美作市の食肉処理施設などへもっていって売るのだそうだ。

いただいた命は、ちゃんと使いきりたい

シカやイノシシの捕獲数は増えたが、捕った獲物を利用できているかというと、シカが食肉として活用されている割合は捕獲数の10〜20%に満たない。それ以外は埋められたり森に放置されるなど、ただ処分されているという。昔から多くの猟師にとって獲物は山の神様からのいただきもの。「ありがたくいただく」という感謝で食べたり革に加工するなど活用してきたはずだった。
「その頃のやり方に比べると、大量に捕獲してお金にするだけのやり方には疑問もある」と話すのは、上山の大芦地区に暮らす梅谷真慈さん。上山へ移住した若手の一人で、くくり罠・檻罠(おりわな)で猟をする。檻罠にシカがかかるのは、年に2〜3回にすぎないが、一度に4頭入っていたことも。

米ぬかなどのエサを少し離れた場所から撒いていき、少しずつ檻の中へ誘導する。檻の真ん中で獣がトリガーに当たると上のワイヤーが外れて戸がすとんと落ちるようになっている。

米ぬかなどのエサを少し離れた場所から撒いていき、少しずつ檻の中へ誘導する。檻の真ん中で獣がトリガーに当たると上のワイヤーが外れて戸がすとんと落ちるようになっている。

「この前ここでとどめを刺したので、まだ血の匂いがしているのか、しばらく寄ってきません」。とどめをさすのに、この現代において槍(!)を用いるのだとか。シカが捕れたら「せっかく命をいただくのだから、ちゃんと使い切りたい」と、自らさばいてジビエ料理にし、皮はなめして革小物にしている。

生の皮を加工できる革にする作業をなめしという。シカの皮は工場へ持って行ってなめしてもらう。

生の皮を加工できる革にする作業をなめしという。シカの皮は工場へ持って行ってなめしてもらう。

革製品をつくれるようになったら販売まで自分でやりたい。数は多くなくても、年に100個くらいの財布や名刺入れなどを販売できれば充分と考えている。

革製品をつくれるようになったら販売まで自分でやりたい。数は多くなくても、年に100個くらいの財布や名刺入れなどを販売できれば充分と考えている。

自然とのつき合い方そのものを問い直す

「昔は猟師仲間が協力し合って、楽しみながら猟をしていたんですよね。人間が暮らしていく中でごく自然にシカやイノシシを食べたり革を使えれば獣の数が抑えられて、人の暮らす「里」と獣の暮らす「山」の境界線が保たれる。だから僕は一人の猟師が100頭捕れるようになるよりも、10人が年に10頭捕まえる方がいいと思うんです」。
害があるから処分するという視野の狭い対症療法ではなく、「人間の動物や自然とのつき合い方そのものを問われているんじゃないか」と梅谷さんは話す。

梅谷さんのつくったシカ肉のローストとカツレツ。家族や友人たちといただくのが楽しみ。どちらも柔らかくて驚くほどおいしい。

梅谷さんのつくったシカ肉のローストとカツレツ。家族や友人たちといただくのが楽しみ。どちらも柔らかくて驚くほどおいしい。

梅谷さんが持ち歩いているシカ1頭分の革を使ってつくったというカバンは独特の深い色ですごくいい感じ。

梅谷さんが普段持ち歩いているシカ1頭分の革でつくったというカバンは独特の深い色ですごくいい感じ。

次に革のものをつくる予定は?と尋ねると「シカを捕まえたら」と返ってきた。そうなのだ。次にいつご馳走を食べられるか、新しいカバンを新調できるかは獲物次第。シカが自分の手元にまわってきたときには、無駄なく使い切る。ここ上山に暮らす人たちは、人もそんな自然の循環の中に生きていることを肌で知っている。そしてそれは、多くの人が忘れてしまっているのだけれど、とっても理にかなったことなのだ。

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