野草料理

野山の草花を日々の食事に
野草のある食卓

野草

野山に生息する植物には、「雑草」といわれるものであっても、人が食べられるものがたくさんある。上山の坊集落に暮らす松原家の食卓には、毎日のように季節の野草をつかった料理が並ぶ。例えばある日の晩ご飯は、タンポポの根っこのきんぴらに、アケビの葉のサラダ、りょうぶ飯、ヤブカンゾウやカラスノエンドウを刻み入れた餃子…と献立はごく普通の家庭料理でも、“野菜”の代わりに“野草”を徹底して使う、といった具合。それも素人目にはハコベやカラスノエンドウ、タンポポといった身近な雑草にすぎないが、松原さん夫妻が見れば、ほとんどが薬草と言えるらしい。

野草

「料理に使うのも基本的には薬草が多いですが、この葉っぱがこの症状に効くというように薬として考えるよりも、毎日の食事に取り入れることで胃腸の調子がよくなったり、ミネラルをたくさん摂取できるなど、野草の力で身体を整えられるのが良いところだと思って使っています」とは、奥さんの久美さん。
松原家にとって、野草は立派な食材なのである。

松原久美さん。松原家の周りは薬草の宝庫。一般的な家庭で「庭からネギ取ってきて〜」と頼むのと同じような感覚で、久美さんは子どもたちに「タンポポ摘んできて〜」と声をかける。

松原久美さん。松原家の周りは薬草の宝庫。一般的な家庭で「庭からネギ取ってきて〜」と頼むのと同じような感覚で、久美さんは子どもたちに「タンポポ摘んできて〜」と声をかける。

野草料理のおもてなし

上山では、春になるとハコベやカキドオシ、イノコズチ、カラスノエンドウ…といった野草が一斉に芽を出し、花をつける。
この季節に松原家を訪ねると、久美さんがこんな豪勢な野草料理でもてなしてくれた。

これらすべて、野草をつかったお料理。

これらすべて、野草をつかったお料理。

まず気になったのが、きれいなピンク色の飲み物。イタドリを丸ごと絞ったジュースなのだとか。イタドリとは、ギシギシやスイバに似た雑草の代表格のようなやつで、赤い茎は堅くてかじると酸っぱい。それでも昔から便秘や咳止め、胃弱にいいとされる民間薬でもある。これを葉だけでなく茎ごとミキサーにかける。酸っぱくてさっぱりした味で暑い日に飲むと元気が出る。

「茎の赤い部分に薬効成分があってきれいなピンクになりますが、すぐ飲むのが大事。2〜3日たつと緑色になってしまいます」

ピザにのっているバジルのような葉はイノコズチ。焼く前にはオオバコやナズナ、タンポポなどものせて焼くが、焼き色がついてしまうため食べる前にフレッシュな葉をのせるときれい。季節によって、レンゲやフジの花など、花をのせるとより華やかに。

ピザにのっているバジルのような葉はイノコズチ。焼く前にはオオバコやナズナ、タンポポなどものせて焼くが、焼き色がついてしまうため食べる前にフレッシュな葉をのせるときれい。季節によって、レンゲやフジの花など、花をのせるとより華やかに。

たくさん野草が入っていても青臭さなどまるで感じられず、全粒粉でつくったというピザ生地もとてもおいしい。サラダやスープにはそのとき採れるものを手軽に入れる。

この日のサラダはトマトにタンポポやイタドリの葉、ハコベ、クローバーなどの野草を和えたもの。

この日のサラダはトマトにタンポポやイタドリの葉、ハコベ、クローバーなどの野草を和えたもの。

スープにはカラスノエンドウ、オムレツにはハコベ、オオバコ、イノコズチ。家の周りで集めた葉っぱでこれだけのご馳走ができるなんて、草の力は侮れない。

身体を治すというより整える

久美さんは薬剤師の資格をもち、ご主人の徹郎さんとともにクワやベニバナなどの薬草茶を製造販売しながら、週に3日は隣町の薬局に働きに出ている。この薬と植物のプロである夫婦が「周りにたくさん生えているのに食べないのは勿体ない」と口を揃えるのも、薬草にはただで手に入る以外に良いことがたくさんあるからだ。春の草は苦みがあり、冬の間に新陳代謝が低下して身体にたまった毒素を浄化してくれるし、夏の草には疲労回復などの効果があるという。四季折々の野草を摂ることで、私たちの身体は大きな自然のサイクルに順応するようにできているのだ。

一番上の列左からドクダミ、レンゲ、カラスノエンドウ、ハハコグサ、イタドリ、(2列目)カキドウシ、ヨモギ、カラスノエンドウの豆、タンポポ、(3列目)スイカズラ、ヤマウコギ

一番上の列左からドクダミ、レンゲ、カラスノエンドウ、ハハコグサ、イタドリ、(2列目)カキドウシ、ヨモギ、カラスノエンドウの豆、タンポポ、(3列目)スイカズラ、ヤマウコギ

久美さんたちがこうした食生活を始めたのも、3年前に上山へ移住してからのこと。それ以来、子どもたちに免疫力がついたと感じている。自身も今では数日野草を摂らない日が続くと、体調がいま一つと感じるほど。
それにしても、それほど良いものなら、どうして今まで私たちはもっと野草を食べてこなかったんだろう。

「やっぱり手がかかりますもんね。薬草茶などは昔からつくられる方がいますが、大量に摘んで、洗って、乾かして、といった作業が必要。お茶に関しては、私らがそこに手をかける分、地域の人たちに販売してビジネスにできたらと思っているんです。でも、身近にある草をサラダやスープに加える程度なら、誰でも簡単に実践できると思います。もちろん、地域の人たちにもできるなら実践してほしい」。

毎日「お月様が見えるまで」外で遊びまわる子どもたち。野草料理にも慣れたもので、子どもたちも躊躇なくほおばる。

毎日「お月様が見えるまで」外で遊びまわる子どもたち。野草料理にも慣れたもので、子どもたちも躊躇なくほおばる。

自然の営みに寄り添いつつ、自然の力を最大限に役立てること。それこそ、これからの時代に求めるべき「最先端の田舎」の暮らし方かもしれない。

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