秋祭り

小さくても守りたい、地域の伝統ある行事。

10月といえば収穫の秋。全国の農村では収穫を祝い、半年間の労をねぎらう秋祭りが行われる。ここ上山でも10月16日、上山神社の秋祭りが行われた。
「かつては前日から宵宮(よいみや)という神事が行われていました。当日は、獅子舞のほかにも女性たちによる舞いも行われていましたね。神輿は子ども神輿と一緒に広い上山一帯を練り歩くという、賑やかなお祭りでしたよ」
と語ってくれたのは小林博巳さん(昭和11年生まれ)。上山の各集落から選ばれる宮総代のまとめ役、総代長を務める。
しかし400年も昔から続いていた秋祭りの獅子舞も、棚田の耕作放棄が進むと共に衰退し、2004年を最後に行われなくなっていた。

祭りの準備を整えた、朝の上山神社。

祭りの準備を整えた、朝の上山神社。

上山集楽の白子愛也さんは金合地区の宮総代を務める。早朝から境内の掃除。

上山集楽の白子愛也さんは金合地区の宮総代を務める。早朝から境内の掃除。

「地域おこし協力隊として上山に来た2010年に、かつて獅子舞があったことを聞きました。だったら田んぼだけではなく、地域の伝統行事も復活させたいと思って、上山神社の拝殿に置いてある箱を見せてもらったんです。すると中には獅子舞の獅子や、はっぴ、お囃子の譜面などが納められていました。もうカビ臭くなっていましたが、幸いネズミにはやられていませんでした」
と、薬師堂地区の宮総代を務める水柿大地さん。

注連縄も上山で取れた稲わらで編む。「今年は稲の丈が短くて、縄が細くなってしまいましたね」と小林博巳さんが笑う。

注連縄も上山で取れた稲わらで編む。「今年は稲の丈が短くて、縄が細くなってしまいましたね」と小林博巳さんが笑う。

彼は地域おこし協力隊の後輩として美作市にやって来たメンバーとともに、獅子舞の踊りを学んだ。先生は、かつて獅子舞の踊り手だった地元のお年寄りたち。酒を飲みながら教わるのは大変だったと言うけれど、地元の人にとっては、
上山唯一の無形文化財と言われるくらいに大切な踊りであることも知る。
そして2011年の秋、見よう見まねで獅子舞を復活させた。同様に途絶えていた夏祭りを復活させるのは、この翌年のことになる。

 いよいよ獅子舞の本番に臨む、上山集楽の沖田政幸さん。

いよいよ獅子舞の本番に臨む、上山集楽の沖田政幸さん。

以来、秋祭りも獅子舞も毎年行われ、2016年も無事に秋祭りの朝を迎えた。花や注連縄などの飾り付けは、各地区の宮総代が集まって、一週間ほどかけて作られた。もちろん注連縄は上山で刈り取られたばかりの稲が使われる。
上山の各地区に住む80代90代のお年寄りが、いつもの野良着ではなく、ジャケットやスーツに着替えて上山神社に集まってくる。中にはすべての末社や神門の前で手を合わせるお年寄りもいる。これもまた、昔から繰り返されていたことに違いない。

奉納の獅子舞。お囃子も、上山の子どもたちの演奏。

奉納の獅子舞。お囃子も、上山の子どもたちの演奏。

神社の境内には夏祭りのような屋台は並んでいない。驚くほど簡素ではあるけれど、神事としては必要にして充分なのだ。
毎年、津山からやって来る神官の祝詞が始まり、続いて獅子舞が奉納される。舞うのは2013年に上山に移住してきた、上山集楽の沖田政幸さんと水柿大地さんとのコンビだ。お囃子は、小学生が使う縦笛でも吹けるようにアレンジされ、その曲に合わせて舞う。

場所を移した御旅所での舞いは、より荒々しい。

場所を移した御旅所での舞いは、より荒々しい。

舞いには飛び込むような動き、地面を這うような動き、さらには飛び上がって、再び腹ばいになる、というような動きが続く。時間にして約7〜8分。終わった後にはふたりとも完全に息が上がっている。

普段は薬草の研究を続ける松原徹郎さんは、坊地区の宮総代として参加。御神酒を配っている。

普段は薬草の研究を続ける松原徹郎さんは、坊地区の宮総代として参加。御神酒を配っている。

無事に祭りを終えた小林博巳さん、安堵の表情。

無事に祭りを終えた小林博巳さん、安堵の表情。

神前での奉納が終わると、神輿は子ども神輿とともに上山神社を出て、歩いて2分ほどの場所にある「御旅所」に到着。ここでも「わっしょい」などのかけ声はなく、お囃子の中で静かに行列が進む。上山のお祭りは、常に厳かなのだ。
そして御旅所でも祝詞と獅子舞の奉納。こちらでは、より動きが大きく、荒々しく舞うのだという。

無事に大役を終えた、水柿大地さん(左)、高原利章さん(中)、沖田政幸さん(右)。このとき、すでに足はふらふらだったという。

無事に大役を終えた、水柿大地さん(左)、高原利章さん(中)、沖田政幸さん(右)。このとき、すでに足はふらふらだったという。

「僕はもともと、宗教的なものにはまったく関心がなかったんです。それでも上山で農業をやるようになって、お祭りの意味がわかるようになりました。去年作った米を今年食べて、今年作った米を来年食べる。このような循環の中にいると、やはり何かに対して『来年もよろしくお願いします』と思うようになるんですね。獅子舞を始めた頃は、意味もわからずに舞っていたのですが、今では上山の神様にしっかり見てもらいたくて舞ってます」
と、水柿さん。
雨の多い夏ではあったけれど、棚田には黄金色の稲穂が実っている。来年もまた、無事に感謝の舞いが舞えますように。

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上山集楽

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